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*新築事例:一押し住宅

イチ押し住宅

イチ押し
リビングから外観
テラスへと連続する木組み現しの天井、そしてルーバー。
ウチ・ソトの意識を超えて展開する空間は、ひと言、ダイナミック。
限定されない空間の面白み、暮らす自由、暮らす楽しみがバリエーション豊かに広がる。

ウチ・ソトなく広がる一体感
空間を超えた空間

■仙台市・W邸
■設計/針生承一建築研究所
 TEL:022-385-3580
 HP:http://www.haryuken.com/
 E-mail:[email protected]
■施工/松井建設(株)東北支店
 TEL:022-236-1521

明快さが生んだダイナミズム
 光る庭が、その向こうに見えた。そこは、建物に内包された駐車スペース兼アプローチ。四角くフレーミングされた光る庭に対して、陰るその空間をさらに引き締めているのが、櫛目引きのダークな壁。横に筋を引いた塗り壁は、外壁の主要を占める縦張りのガルバリウムとは表情を異にし、渡る風をやんわり受けとめるような柔らかさをももっている。
 陰の空間に淡く浮かびあがる乳白の扉。そこが、W邸の玄関。ポリカーボネイト二重張りの玄関ドアは、波打つ曲面も柔和だ。そのドアを開けると、建物を貫く廊下がまっすぐに延びていた。突きあたりは透明なポリカのドア。外の緑がかすかに透け、壁では得られない奥行き感をもたらす。陰の空間から、光を薄くにじませた廊下空間へ。そして…。
 目前に広がったのは、2層吹き抜けの南側全面をガラスとしたダイナミックな空間だった。張り出した軒の上部には木製のルーバー。夏の強い陽射しを遮り、冬は低い太陽を受けて室内に光の筋を深く導き入れる。2階に上がってみれば、その空間はより圧倒的な広がりと光の妙味を見せる。ご主人のワークスペース、廊下、奥さんとお子さんのデスクが置かれたホワイエが吹き抜けを介して居間と一体化し、3ヵ所に設けたテラスとも緩やかにつながり、ウチ・ソトの感覚を超えて開ける。特に廊下からホワイエへと連続する天窓の光の帯が、美しい。ここにもやはり木のルーバーが仕込まれ、光がグラデーションとなって廊下から吹き抜けへと呼びこまれていく。
 建築家・針生承一さん設計のW邸は、1〜2階とも、廊下を境に北側を水まわりや個室などの生活空間、南側を多目的な遊び場と明快に分けて計画された。遊び場である居間ではお子さんがミニカーを走らせ、夜にはホームシアターを楽しみ…。生活と遊びをきっぱり分けたW邸。その割り切りの良さは呼びこむ光にも現れ、W邸の時間と空間にメリハリとドラマを生み出しているように思えた。
ワークスペース
中2階のワークスペース。吹き抜け部とあわせて、ここにも天窓が設けられ、木組みを現した天井に表情をつける。

テラス
ホワイエから寝室前のテラスを見る。

玄関
光る庭がコントラストよく映える。右側が、横櫛目引きの壁に、乳白色のポリカーボネイトのドアを配した玄関。


ホワイエ
天窓の光を受けて明るい2階ホワイエ。右手には家族の個室と洗面が並ぶ。


廊下
玄関からまっすぐに延びた廊下を見る。右手北側に水まわり、左手に吹き抜けの居間を配置。

庭
庭側から見る。
図面

「荒井の家」 Concept/針生 承一

 敷地は仙台市の東部に位置しており、将来は地下鉄の乗り入れが計画されるなど、新しい街づくりが進められている場所にあります。
 家づくりの経緯は、土地区画整理事業によりそれまで住んでいた家をひき家する必要がありましたが、老朽化が甚だしく、さらに、一人息子を広い空間で、のびのびと育てたいとの考えから、新築を選定されました。家族構成は夫婦と子どもの3人家族ですが、将来的には親との同居も視野に入れており、そのため中2階のワークスペース下の1階部分を、居間と仕切って利用する計画としました。
 全体の空間構成は、水まわりを北側に集中させ、南側は2層吹き抜けの居間を中心に、中2階レベルに設けたワークペース、2階ホワイエを配した開放的な空間として考えました。また、庭に面する南側の開口部は、木製建具により前面を開放し、ウッドデッキを介して前庭へと連続させました。階段およびホワイエ、主寝室前のテラスの上部はガラス屋根とし、室内側には木製ルーバーを設置、日照調整を図りました。さらに、1階のリビング、廊下、水まわり、および2階のホワイエ、洗面所には温水式床暖房を採用することで、大きな吹き抜け空間も快適に過ごせるよう配慮しています。駐車場およびアプローチはスロープとし、玄関やデッキテラスの段差を最小限に抑えることで、室内空間はもとより外部空間も含めてバリアフリー化を図りました。
 内部仕上げ材は環境と人体への影響に配慮。木組み現しの天井をはじめ、自然素材を使用しております。また、中2階のワークスペース下の居間の壁と天井には、県との共同開発による「シルク和紙」を使用。化学物質の吸着性と調湿効果を持たせるとともに、空間に暖かみを与えることを狙ったものとしています。


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