住宅雑誌Replan（リプラン）

　木や石、土といった自然の中にある素材を使い、伝統の技が息づく在来工法の家を一貫して手がけてきた武山住宅。Ｔさん宅にもそのノウハウが存分に注ぎ込まれています。
　「広々とした家でゆったりと暮らしたい」というご主人の希望に沿い、延床面積60坪超の中に２ＬＤＫと、シンプルかつ贅沢な間取り。数寄屋造り風の重厚な外観に対し、室内には無垢材の素朴な風合いに満ちた心安らぐ空間が広がります。たたきに石巻産の稲井石を敷き詰めた玄関を一歩入ると、目に飛び込んでくるのは上質感あふれる玄関ホール。青森ヒバの大黒柱や梁、麻入りの珪藻土が施された壁、スギの格天井に包まれた高級和風旅館のような佇まいが印象的です。
　その他の空間にも、リビングに設けられたスギの唐傘天井や、組子の技法で模様を浮き上がらせた和室の建具、ナラの木で手づくりされた玄関収納など、精巧な職人技が随所に。師匠から弟子へと脈々と技術を受け継いできた同社ならではの住空間と言えるでしょう。
　夏は涼しく、冬は暖かくの考えのもと、開口部は通風・採光に配慮してレイアウト。さらに2重サッシを取り入れるなど、断熱性能にもしっかりとこだわっています。ＬＤＫや水まわりには温水式床暖房を採用。清々しい木づくりの空間を、足元から暖かな空気が満たします。
　ゆとりの間取りと木が織りなす瀟洒な意匠、そして快適な暮らしを支える性能。Ｔさん宅は、そのすべてで心地よさを追求した一軒です。