住宅雑誌Replan（リプラン）

築100年の蔵を住居に再生。
エコと快適を叶えた小さな家

福島県伊達市・Tさん宅　設計／大森典子建築設計事務所　施工／（有）今野建業

蔵の記憶を継承しながら
夫婦2人にちょうどいい
暮らしやすい空間を実現

　果樹園を営むTさん宅には収穫物や作業機械等の収納蔵がいくつもあり、昔から補修を繰り返しながら大切に維持してきました。その中の一棟、震災で土壁が崩れた蔵を「どう直したらいいだろう？」と相談したのが、奥さんの妹で設計士の大森さん。外壁は損傷しているものの内部状態は良好だったことを確認した大森さんは、夫婦のための「小さな家」に再生することを提案します。というのも、それまで住んでいた母屋は夫婦2人には広すぎ、冬の寒さにも閉口していたからです。
　 再生プランの核となったのは、必要十分な広さと快適性を兼ね備えること。間取りはリビングや水まわり、寝室を1階にまとめ、生活動線やバリアフリーにも配慮しました。無駄のない間取りや大きな吹き抜けの効果で、圧迫感は皆無。断熱・気密をしっかり確保したことに加え、冬は南面の三連窓からの日射取得も期待できます。「これまでの家とは、玄関を開けた瞬間の空気が全然違いますね」と、ご主人も性能の高さを実感。古い蔵の記憶を残しつつ、2人暮らしにジャストサイズの快適な終の棲家へと生まれ変わりました。

Reform Point

元の柱や梁はほとんど塗装等の加工なし。古材の味わいをそのまま見せている。階段の踏み板や棚の造作は蔵2階床板からのリメイク。

限られた空間でも広々と感じられるよう、南面は吹き抜けの大空間とした。蔵を支えた通し柱の力強さが映えるデザイン。

UA 値0.35、Ｑ値1.05、Ｃ値0.4の高性能を実現。エアコン1台で冷暖房でき、冬の日射取得や夏の日射遮蔽にも配慮している。