図9の分析を通して、人体の放熱内訳と、効果的に快適性を得る方法が見えてきました。最後に、筆者のおススメの方法をまとめておきましょう。
暑い夏の昼間は、日射遮蔽を徹底した上で、とりあえずエアコンを動かします。ただし冷やしすぎると寒く感じる人も出てくるので、なるべく高めの28℃くらいでよいでしょう。実測ではこれより高温の家も多く見られますが、やはり熱中症が怖いので、28℃は維持したいところです。建物外皮の断熱がしっかりしていれば、放射温度も自然に空気温度に近くなります。なお、除湿は涼しさへの効果が小さい割に熱負荷が大きいので、湿気が気にならない場合はなるべく使わない方がベターです。
こうして健康上問題なく、かつ誰も寒さを感じない室内の空気・放射環境を確保した上で、後は個人の着衣や風利用で対応します。最近は涼しい肌触りをアピールした下着も増えていますし、扇風機も風量の微妙な調整が可能なコードレスタイプも出ています。着衣や風は個人で好きに調整できて、かつすぐに効果が得られ、なによりエネルギーをほとんど必要としません。
後はなるべくリラックスして、代謝量を減らすことです。テレビは内部発熱を増やしますから、なるべく本などを読んで優雅に過ごしたいものですね。
今回は7回目に続いて、冷房の涼しさをもう一度取り上げました。暑い夏を少ないエネルギー消費で、家族全員が快適に過ごせる方法について、人間の熱バランスから考えてみました。皆さんも環境物理の基本を知った上で、快適な過ごし方を考えてみてくださいね。